趣味で集めていたお茶碗の写真です。
真ん中に写っている大きめの赤茶色のゴツゴツしたやつは、この前岐阜県に旅行に行ったときに陶芸体験で作った美濃焼の「赤志野」です。
なぜ急に陶芸の話題かというと、飲食店をやるにあたって「食器」に関する知識は少なからず必要だからです。
例えば皆様がちょっとお高い所で、特に和食のお店などでお食事されたときに注意して見ていただきたいのは食器です。
お料理は「○○県産の牛肉を使った・・・」とか「○○港でとれた新鮮な・・・」とか地名や産地の説明があると思います。
そういった時はその場所にちなんだ食器がさりげなく使われているのです。
丹波牛のヒレステーキを「丹波焼」にのせたり、とちおとめのジェラートを益子焼でだしたりと、ちょっといい感じの演出が出来たりします。
まぁうちのお店ではまだそこまで食器に力をいれるまでにはいたってませんが・・・
それとは別に、料理をやってる人が突き詰めて行くと、自分の料理をのせる皿を作るために、陶芸に目覚める人もいます。
僕は仕事として料理を作るわけではありませんが、違う経路で陶芸にたどり着きました。
僕は店舗の設計と販促物の制作をメインの仕事としてやっています。
そうすると、日本人でデザインや物作りに携わる人が皆影響を受けている偉大なクリエイターの存在にぶち当たります。
それが「千利休」です。
言わずとしれた、お茶を「道」として形作った「茶道」の生みの親です。
お茶会の道具もそうですが、茶室そのものの建築デザイン、イベントの会場プロデュースなど幅広く才能を発揮し、その後の日本に多大なる影響を残しています。
あのココシャネルより先に「黒」を取り入れて、絢爛豪華が最上の時代に「質素」であることの美しさを説いた斬新な偉人です。
そんな偉人の影響で、やはり陶芸というのに興味が湧いてしまいます。
昔の日本は今と違い「唐物」がセレブのステータスでした。
高麗青磁は均衡のとれた綺麗な形と美しい色、なんといっても当時の日本にはない技術力が、お金持ちを魅了したのでしょう。
例えるならなんでしょう?メルセデスベンツやフェラーリ、ランボルギーニなどの輸入車をステータスとしているような感じでしょうか。
そこへ日本人であり異国文化に詳しい千利休が、海外の文化も吸収しながら日本人らしい新たな物作りをはじめたのです。
経年の粗末な見た目を逆に味わいと感じ、歪んでしまったものにも自然の変化の美しさを思う考えです。
外国の輸入車が一番だった時代に、日本でトヨタやニッサンが生まれて、やがては日本人らしいハイブリッドカーができたような感じです。
さて、ここで陶芸の豆知識ですが、よく「陶器」という言い方をしますが、厳密に言うと全てが陶器ではありません。
大きく分けると「土器」「炻器(せっき)」「陶器」「磁気」の4つに別れます。
■土器とは
窯を使わず野焼きで、比較的低温で焼かれる釉薬を使わない素朴な焼き物。
歴史で勉強する縄文土器などの焼き方です。
※釉薬とはうわぐすりともいい、ガラス質のコーティング材です。
和食器ではよく見かける光沢のあるドロドロした、焼く前に塗る液体です。
隣の画像の備前焼以外はすべて釉薬が塗ってあります。
■炻器(せっき)とは
鉄分を多く含んだ土を使い、高温で焼き絞めるので、固くて吸水性がほとんどない。
日本では釉薬を使わない物が主流ですが、まれに高温で灰が溶けて、それが自然に釉薬のかわりになる自然釉が出来ることもあります。
せっ器の例としては、隣の画像の備前焼や他にも信楽焼、丹波焼、常滑焼、益子焼、笠間焼があります。
■陶器とは
吸水性がある粘土を使って焼くので、釉薬を使いコーティングします。
叩くと鈍い音がする、厚手の焼き物です。
隣の画像では備前焼以外のが全部そうです。
代表的なのは美濃焼、瀬戸焼、伊賀焼、萩焼、楽焼などです。
■磁器とは
粘土に石の粉末を混ぜて練って材料にするので、ガラスみたいに吸水性がない固い焼き物です。
一番普及してる一般的な食器です。
代表的なのは九谷焼や、有田焼、伊万里焼などです。
ちなみに海外でみられる「古伊万里」と呼ばれるアンティークの伊万里焼は、当時の有田焼を伊万里港から輸出したのでその名前になったようです。
ですので当時の有田焼と伊万里焼は同じですが、今は伊万里で作ったものを伊万里焼と呼ぶようにしてるみたいです。
そして僕が大好きなのが、自分でも作った美濃焼の「志野」です。
美濃焼といえば、古田織部がプロデュースしたオリーブ色の「織部好み」が有名ですが、他にも色々なデザインがあって、赤志野、鼠志野、黄瀬戸、瀬戸黒などどれもいいです!
瀬戸と名前がつくのがありますが、瀬戸焼ではありません。
ちょっとややこしいですが、瀬戸焼はお隣の愛知県なのでその影響でしょうか。
昔はヴィンテージ感たっぷりの備前焼が最高だと思って「志野」の良さがわかりませんでしたが、何年かすると志野の良さが分かってきました。
美濃焼を体験したときは轆轤(ロクロ)でやりました。
轆轤で作ったときは丁寧に作ったんで綺麗な形になってしまって「何か機械生産みたいだなー」って思ったんですが、出来上がったのを見るとイイ感じにゆがんで良かったです。
この陶芸体験は岐阜県多治見市の「虎渓窯」に行きました。
ここが凄いイイ感じで、何がイイって環境がハンパないです。
急勾配の坂道を車で上がると、一気に喧騒から離れ、小高い丘の上にある古い大きな日本家屋のお屋敷にたどり着きます。
そして、良く手入れが行き届いてる庭を進むと、歴史を感じる日本家屋に所狭しと美濃の焼き物が並んでいます。
その陶器を眺めたあとに、昔ながらの趣の道場へ行き、静寂の中で轆轤を回します。
そして陶芸を楽しんだあとは、街並みが展望できる道場の二階へ上がり、美濃焼でお茶を頂いてくつろげます。
しかも、夏休みに行ったのにも関わらずこんな環境が貸切でした。
ご主人も凄いイイ方で、最初は教えてくれますが「あとは好きにやってみて下さいね」みたいな感じで細かく色々言われないのが良かったです。
もちろん聞けば親切に教えてくれます。
あんな空間が近くにあったら定期的に行きたいです。